Connecting...

戻る
Blog Img

インド転職/採用:「転職」に対する固定観念を問い直す

転職、その見方をアップデートする必要性

「転職を繰り返すこと」。この言葉には、人それぞれ異なる意味が込められています。

ある人にとっては、挑戦意欲や柔軟性の象徴であり、別の人にとっては一貫性や長期的なコミットメントに対する不安材料となることもあります。

転職はかつてよりも一般的で、かつ多様な背景を持つ行動となっています。それにもかかわらず、転職に関する議論は今なお「賛成か反対か」「良いか悪いか」「忠誠かリスクか」といった二元論に陥りがちです。

こうした固定観念から一歩離れて、転職をより多面的に捉える視点を持ってみましょう。

若手の転職は模索か、それとも迷走か?

キャリア初期の人材にとって、職場を変えることは自己理解を深め、スキルを磨くための重要なプロセスです。異なる環境やチーム、業務に触れることで、多様な視点や経験を得ることができ、将来のキャリア形成に役立ちます。

しかし、採用担当者の視点から見ると、短期間での転職が続く場合には懸念が生じることもあります。それが戦略的なキャリア探索なのか、それとも方向性を見失っているのか、判断が難しいためです。

このようなケースでは、候補者が各職務で何を学び、どのようにキャリア観が変化したのかを明確に説明できるかが重要なポイントとなります。採用担当者は、在籍期間だけでなく、意思決定の背景や転職の目的を丁寧に尋ねることで、その選択が意図的かつ前向きなものであるかを見極めることができます。

履歴書の“行間”を読む力

履歴書には職歴が時系列で記載されていますが、その背後にある事情までは読み取れません。たとえば、異動や退職の理由が人員削減だったのか、価値観の不一致だったのか、あるいは個人的な事情や成長機会の欠如だったのか——その文脈こそが重要です。

頻繁な転職そのものが問題なのではなく、それを候補者自身がどう捉え、どのように意味づけているかが問われます。何がうまくいき、何がそうでなかったのか。そして、どのような判断を経て次のステップを選んだのか。そうした経験を自分の言葉で語れる人は、信頼を得やすい傾向にあります。

採用担当者としては、キャリア選択に関する自由回答形式の質問を通じて、候補者の思考や価値観を引き出すことが有効です。候補者側も、成果だけでなく、そこに至るまでの学びや気づきを率直に語ることで、洗練された経歴以上に強い説得力を持つことができます。

「3年ルール」はもう古い?

長期在籍は、業務への継続的な取り組みやスキルの深まり、組織への安定的な貢献を示す要素として重視されてきました。しかし、すべての業界が同じスピードで動いているわけではありません。

特に技術系、クリエイティブ分野、スタートアップ業界などでは、短期間でも大きな成果を上げることが可能です。プロジェクトベースの職務では、在籍期間の短さが必ずしも経験の浅さを意味するわけではありません。

とはいえ、短期の職務が繰り返される場合、採用担当者がその理由を確認するのは自然なことです。候補者がその期間に何を達成し、それが自身のキャリア目標とどのように結びついているのかを具体的に説明できれば、在籍期間よりも貢献の中身に焦点を移すことができます。

転職後の変化に強い人、疲れる人

転職には常に学習曲線が伴います。新しいツールやシステムへの習熟、人間関係の構築、期待値の理解など、環境に適応するための努力が求められます。

変化の中で力を発揮できる人もいれば、表面化しにくい疲労やストレスを抱える人もいます。組織にとっても、離職は単なる人員の入れ替えではありません。チームの勢いが途切れたり、知識の継承が難しくなったり、研修やオンボーディングの負担が増すなど、さまざまな影響が生じます。

頻繁な転職者が必ずしもリスクであるとは限りません。むしろ、多くの人が柔軟性や回復力を備えており、変化に強い資質を持っています。ただし、採用担当者としては、候補者がどのようにエネルギーを維持し、意欲を保っているのかを理解することが重要です。変化に対する姿勢やセルフマネジメント力を見極めることで、より適切な人材選定につながります。

社内で満たされなかった成長機会を求めて

人は常に望んで転職するわけではありません。社内での成長機会が限られていたり、その道筋が不透明であったりする場合、外部に活路を求めざるを得ないこともあります。

こうした状況は、企業側にとっても重要な気づきの機会となります。自社内で成長の機会は十分に提供されているか。人材が外に目を向ける前に、挑戦の場やキャリアの展望を提示できているか。これらを見直すことは、優秀な人材の定着につながります。

一方、候補者側も、転職に至った背景を率直に語ることが有効です。社内で成長を試みたが叶わなかったという経験は、単なる忍耐不足ではなく、主体的にキャリアを切り拓こうとした姿勢の表れとして評価されることがあります。

短期離職の背景にあるのは、環境要因の可能性も

短期の職務経験が、必ずしも誤った選択や計画性の欠如を意味するわけではありません。人員削減、組織再編、予期せぬ経営陣の交代など、特にグローバル企業や急成長中の業界では、個人の意思とは無関係に環境が大きく変化することがあります。

こうしたケースでは、転職の背景にあるのは個人の不安定さではなく、市場や組織の構造的な変化である可能性が高いです。採用担当者は、候補者がそのような困難な状況にどう対応したのかを丁寧に聞くことで、適応力や判断力を見極めることができます。

候補者側も、冷静に背景を説明することで、自身の選択がどこまでコントロール可能だったのか、そしてその中でどのような行動を取ったのかを明確に伝えることができます。こうした説明は、単なる職歴以上に、候補者の思考力や行動力を示す重要な要素となります。

幅広い経験の裏で、深さはどう評価するか

転職を重ねた人材は、柔軟性や利害関係者との調整力、部門横断的な協働経験、さまざまな業務システムへの理解など、多くの実践的なスキルを身につけています。そのため、即戦力として現場で活躍するケースも少なくありません。

一方で、長期的な戦略の立案やプロジェクトの完遂、後輩の育成、レガシー業務への対応といった、時間をかけて築く経験が不足している可能性もあります。これは、組織における持続的な貢献や文化形成に関わる重要な要素です。

候補者にとっては、幅広い経験を得てきたことに加え、今後はより深い専門性や長期的な成果を追求したいという意欲を示すことが望まれます。採用担当者は、職務に求められる貢献の種類と、候補者の経験・志向がそれにどの程度合致しているかを丁寧に見極める必要があります。

仕事は好き。でも環境が合わない

転職の理由は、必ずしも昇進や業務への不満とは限りません。価値観の違いやコミュニケーションスタイル、期待との不一致など、職務内容そのものではなく、職場環境とのミスマッチが離職のきっかけとなることもあります。

こうした転職を経験した候補者は、理由の「正当化」ではなく「明確化」を意識することが重要です。どのような環境で自分の力を最大限に発揮できるのかを理解し、それが次に求める職場像にどう影響しているのかを具体的に語ることで、前向きな転職理由として伝えることができます。

企業側も、自社のカルチャーや働き方を正しく理解し、透明性を持って候補者に伝えることで、入社後のミスマッチを未然に防ぐことが可能です。

転職の“なぜ”に耳を傾ける

転職は、良し悪しで判断すべきものではありません。働き方や価値観の変化、個人の選択の背景を映し出す重要な行動のひとつです。その背景には、野心、価値観の不一致、不確実性への対応、好奇心、そして成長への意欲など、さまざまな要素が存在します。

重要なのは、転職という行動の背後にある「物語」を理解することです。候補者には、「何をしたか」だけでなく、「なぜそうしたか」を語る力が求められます。採用担当者には、履歴書の年表だけでなく、その裏にある文脈を引き出す質問力が求められます。

キャリアの歩み方は人それぞれで、常に順調に一直線に進むとは限りません。そして、それを歩む人々も、画一的な枠には収まらない、多様な背景や価値観を持っています。こうした個々の違いを理解し、受け止める姿勢が、これからの採用活動ではますます重要になっていくでしょう。

採用は、スキルや経験だけでなく、その人の歩んできた道のりを理解することから始まります。転職の背景にある「物語」に耳を傾けることが、これからの採用の質を高める第一歩となるでしょう。

インドにおける就職・転職に関するご質問またお困りごとなどがございましたら、お気軽にご相談ください。

お問い合わせ